拡大装置とかみ合わせの乱れ
岡山市のうえき歯科・矯正歯科です。
今回は拡大装置とかみ合わせの乱れについてお話ししたいと思います。
「矯正治療で拡大装置を用いるとかみ合わせが悪くなることがあるという記事を見た」というご意見を、患者さんからいただきました。
拡大装置は、歯の大きさに対して顎や歯列弓が小さいとき、その不調和を解消するために用いるもので、混合歯列期における軽度の叢生(がたがた)の改善には有効な装置です。
適正な診断のもとで装置を正しく使用していれば効果を得ることができますが、使用する症例や使用方法を誤ると弊害が起こることがあります。
拡大装置による治療を行ったのち、当院に相談に来られた患者さんを2例ご紹介します。
症例①下顎臼歯が頬側に傾斜し交叉咬合となった
下顎拡大床装置の長期使用により、写真の矢印部のように下顎臼歯が頬側傾斜し上顎臼歯部と逆転していました。
当院では下顎拡大床装置の使用を休止し、上顎にパラタルアーチを装着して上顎歯列の拡大を行い、臼歯部の咬合は安定しました。
前歯は唇側傾斜したままであるため、今後、患者さんが希望されたらマルチブラケットシステムによる矯正治療を行う予定です。
症例②下顎第一大臼歯の遠心移動により第二大臼歯が生えてこられなくなった
右上写真の装置を用いて下顎第一大臼歯を遠心移動(後方移動)したことによって、第二大臼歯が生えて来られず、レントゲン写真では顎骨の中で斜めになっていました。その後方には智歯(親知らず)も認められました。
スペース不足も解消されていなかったため、当院では上下顎小臼歯抜歯によるマルチブラケット治療を行い、歯列と咬み合わせを改善しました。
まとめ
拡大装置は、使えばいくらでも拡大できるというものではなく、今回のように臼歯のかみ合わせが乱れる、あるいは歯肉退縮や歯が前方に傾斜するといったリスクもあります。
スペースが何mm足りないので何mm拡大するという、無理のない治療計画のもとで治療を行うことがとても重要です。
また、患者さん独自の判断で使用を中止したり、使用期間を延ばしたりすることは控えましょう。
以上、拡大装置とかみ合わせの乱れについてご紹介しました。